大村湾におけるアナアオサの回収、有効利用と環境学習

概要

 長崎県は北海道についで海岸線の長い県である。長崎と海とは切っても切り離せない。付近に良好な漁場を抱え、かつては水産業が非常に盛んであったが、近年は漁獲量の低迷、漁業者の高齢化、海の汚染などにより水産業は低迷している。

 中でも大村湾は汚染による危機に直面しているという。この大村湾の再生に取り組むNPOが長崎海洋環境研究会である。

母なる海、大村湾

 大村湾は全国でも稀な閉鎖性の強い海域であり、長崎沿岸の魚の産卵場となっている。ナマコやイイダコ、大村モズク等は有名で、スナメリも見ることができる。しかし、近年南部海域は汚染が進んでいて魚介類が住めない海になりつつある。

 

 こうした現状を見た古川氏は現理事長の山中氏と共に平成20年に「長崎海洋環境研究会」を立ち上げた。大村湾沿岸の海岸線を調査すると、アナアオサ(アオサの一種)が大量発生していた。漁業被害・水質悪化を防止するためにはアナアオサの回収をする必要があるが、この海藻は再利用の方法がなく回収しても大量の産業廃棄物となってしまう。

 

 そこで、アナアオサを有効利用について研究を行い、堆肥化・鶏飼料へ加工することに成功した。こうした成功事例をあげたものの、任意団体のままでは継続して活動するのは難しいと感じ、平成23年1月にNPO法人となった。

青潮によって死滅した魚介類
青潮によって死滅した魚介類
繁殖しているアナアオサ
繁殖しているアナアオサ

商品開発と啓蒙活動

 アナアオサの堆肥化には成功したものの、価格的にやや割高だったため商品としてはまだ成功とはいえない。成分自体は一般の堆肥に比べミネラルを多く含み、塩分濃度が低めであるなど商品価値は高いはずである。商品として十分な販売数量を確保するため、営業・生産(加工)・販売など商流の各ステップでブラッシュアップを行う必要がある。

 

 また、食品への加工など新たな商品開発を行い、アナアオサの利用の幅を広げることも目標としている。収益性が出るようになれば、地元水産事業者の経済面でのバックアップにもなる。


 大村湾の環境改善のためには、関係する漁業者や地域住民など、当事者が環境改善の意識を持たなければならない。そのためにはより多くの人への意識付けが必要不可欠であり、広報活動・小学校などでの環境学習・清掃活動にも取り組んでいる。


今後の課題

 小学校などに対する環境学習、清掃活動などを継続するためには、資金的な裏付けが必要となる。アナアオサを加工した食品の商品化に成功すれば事業の活動資金となりうる。

 

 本事業では、行政・大学・加工業者の「産・学・官」が連携、協力して実施している。そのため、商品の試作開発段階まではできた。今後は流通・小売業者と連携し実際の商流にのせていきたいと考えている。また他の自治体へのアピールなどができれば事業化にも弾みがつく

 

「自治体・企業とのマッチングなどのサポートを行政には期待している。」と古川氏。アナアオサの回収と利用については長崎県以外の自治体でも苦労しているところであり、事業化に成功した場合その効果は非常に大きい。長崎県にとどまらず、広く全国に展開できる。

 

 「これまでの活動を着実に発展させていきたい。」

長崎海洋環境研究会の一歩一歩地道な研究と成果がやがて全国に広がり、それぞれの地域での海の再生と水産業の振興に役立つ日が来ることだろう。

参考

特定非営利活動法人 長崎海洋環境研究会 http://kaiyo-kankyo.jimdo.com/

長崎県環境政策課 http://www.pref.nagasaki.jp/kankyo/

長崎総合科学大学 http://www.nias.ac.jp/

大村湾をきれいにする会
http://www.city.omura.nagasaki.jp/kankyouseisaku/kurashi/kankyo/shisaku/omurawan.html